甲州高尾山・棚横手

こうしゅうたかおさん(1027m)・たなよこて(1306m)


甲州高尾山は1997年の山火事以来、展望の山として多くの人に歩かれているようです。
残雪の南アルプスと桜並木、稜線から見る甲府盆地の桃色絨毯を楽しみに出かけました。


2009.4.11
(土)
勝沼
ぶどう郷
大滝
不動尊
展望台棚横手富士見台甲州高尾山松の木陰柏尾山大善寺勝沼
ぶどう郷
快晴 07:45着
 07:55発
09:3509:55
10:05
10:50
11:25
11:45
11:50
12:25
12:40
13:10
13:25
13:5014:1514:50着
16:36発



甲府盆地の桃の花がきれいな季節になりました。甲州高尾山は桃の頃がいいらしい。何年もこの時期の候補に挙がっていましたが、なかなか「桃の花満開・すっきり快晴・週末」の三拍子が揃った日に出会えませんでした。が、今日はチャンス。春のわりに素晴らしい快晴に恵まれました。白い南アルプスと桃の花いっぱいの景色を楽しめそうです。


勝沼ぶどう郷の駅は満開の桜に囲まれていました。冬はいつもこの手前から見え出す南アルプスの写真を撮るのに苦労します。反射神経が鈍いので、あっ!と思ってシャッター押した時には、木に隠れたり電柱が重なったりでガッカリでしたが、今日はホームからゆっくり写真を撮ることが出来ました。
桜の間から望む南アルプス。やや霞みながらも、すっきりした白い山並みが見えています。
桜並木の中へ去り行く電車も見送って、わくわく出発しました。


南アルプス
【ホームから見る南アルプス】

勝沼ぶどう郷駅
【勝沼ぶどう郷駅の桜】

南アルプスとぶどうの丘
【振り返りつつ・・・】

駅前の桜の大木を見上げて右へ進み、レンガのトンネルを抜けました。しばらくは車道歩きで、南アルプスを振り返りつつ、緩やかに上って行きます。ぶどう棚の下にはホトケノザが一面に咲き、紫色の絨毯を敷き詰めたよう。

「大滝不動尊」の看板に従って右へ曲り、青い空と白い峰々と下に広がる桃畑が嬉しくて、何度も後ろを振り返りつつルンルンで進んで行きました。


が、ふと気づくと現在地が???  このあたりは農道があちこちに延び、今どのあたりなのか分らなくなりました。近くで畑仕事をしていた人に大滝不動尊への道を聞けば、「あの道を左へ行けば林道に出るから、あとはそのまま行けばいいです。」とのこと。地図も長い林道歩きになっているので納得、安心して進んで行きました。

桃畑がどんどん低くなり、ピンクの絨毯が広がってきて喜んでいましたが、やがて道は右へ上がって行きます。沢沿いのはずなのに高度が上がり、やはりヘンだなあと気づきました。改めて地図を見れば、どうやら山腹に上がって行く林道を歩いている雰囲気。

やれやれ、またやってしまった。地元の方が大滝不動尊へ行く時は車で行くのが当たり前かも知れない。きっと、そのルートを教えてくれたんだと納得。今更下って戻る気にもならず、やむなくそのまま林道を進みました。途中に看板があって、この道は「菱山深沢線」というらしい。ちょっと遠回りだけど、三滝橋で合流するので諦めて進んで行きました。何台かタクシーが追い越して行きます。その度に、がっくり・・・

くねくねカーブしながら、ようやく小さな三滝橋を渡れば、なるほど左から登山道が上がってきていました。やっと正規ルートです。

周辺は植林から自然林に変わり、ミツバツツジやヤマザクラ、ダンコウバイ、キブシなど見ながら進んで行きました。


林道菱山深沢線
【うっすら芽吹きの林道】
南アルプス
【林道上部の展望地点から】

そろそろかなと思われる頃、ちょっと開けて展望のいい箇所にさしかかりました。靄で桃色は霞んでいますが、南アルプスは比較的よく見えていてきれいです。

大滝不動尊の鳥居に着きました。
(入口のトイレは4月まで使用不可)

急な階段を上がると、右側に滝(前滝)が見えて来ました。本堂の背後にあるのが大滝(男滝)で、水量はわずかでした。お参りして、右の登山道へ。

大滝不動尊
【大滝不動尊 左後ろに大滝】
展望台
【展望台】

短い山崩れ斜面を抜けると分岐道標がある林道に出ました。すぐ右の展望台へ寄ってみます。

南アルプスや桃色畑も見えますが、今は木々が伸びて、ちょっと見難い。以前はきっと素晴らしい眺めだったのでしょう。

分岐道標に戻り、富士見台へ向かいます。林道を少し進むと右手に登山道入口がありました。

途中から短い急登になって、尾根に飛び出しました。

素晴らしく展望が開け、さっぱりしたハゲ山斜面が広がって富士山が見えています。上部だけですが春のわりにすっきり見え、白く輝いてとてもきれいでした。

富士見台分岐から
【富士見台分岐から見る富士山】

ここからは気持ちのいい稜線歩き。富士見台は右手のピークのようですが、その前にちょっと隣の棚横手山へ寄ってみます。左へ進むと林道に出ました。横断してコンクリートの階段を上がり、振り返れば松の木越しの富士山。


甲府盆地
【棚横手山への登りから見る甲府盆地】

赤松の急登で、途中左手がちょっと開けて南アルプスや桃畑が見える場所がありました。霞みがちですが、桃色があちこちに見えていてきれいです。

棚横手の山頂に着きました。
10人くらいの団体さんが準備中で、まもなく出発して行きました。

狭いけれど静かな山頂で、「棚横手山」の標柱の他に「大富士見台」の標識もあります。今回ルートの最高点で、富士山は中腹まで見えました。木陰がないので暑いけれど、富士山を眺めつつ昼食。

棚横手山
【棚横手山 山頂】

しかし、今日は本当に暑い。強い日差しに、生暖かい風。ポットの湯で作る熱いインスタント味噌汁より、冷えた麦茶を持って来ればよかったなあと思いました。 数時間後、この棚横手から山火事が発生するとは全く予想だにせず、再度日焼け止めを塗って出発しました。

さっきの富士見台分岐まで下り、すぐ上のピークへ向かいます。いくつかのアケボノスミレが可愛いピンクの顔を出していました。


富士見台から
【富士見台からは南アルプスを眺めつつ】

富士見台は名前どおり富士見の台地。南斜面は山火事のあと植えられた木々がまだ小さいので、これから先のルートがよく見渡せます。

遠くの南アルプスを眺めながら、展望の開けた尾根を気持ちよく歩いて行きました。向こうに見えるのが甲州高尾山でしょうか。

甲州高尾山へ
【甲州高尾山へ】
甲州高尾山
【甲州高尾山 山頂】

先客さん数人が立つ甲州高尾山に到着。
広くはない山頂で、木々が伸びてきているので、数年したら南アルプスは見えなくなりそうです。

僅かな下りで剣ヶ峰に着きました。ここまで高度が下がると、富士山も見えるのは頭だけ。

剣ヶ峰から芽吹きのカラマツ林が続きます。
すっきりした青緑は清々しくて、素敵。

剣ヶ峰から
【剣ヶ峰から見る最後の富士山】

カラマツ林
【カラマツ林に沿って】

カラマツの芽吹き
【カラマツの芽吹き】

赤松が立つ展望のいい場所に出ました。下にはこれからのルートが気持ち良さそうに延びて、右手には桃畑も見えています。ぶどう郷駅の桜並木、ぶどうの丘、桃畑が箱庭のように見えて楽しい眺めです。今日はずっと太陽燦々の道でしたが、ここは木陰で風も抜け涼しい。ほっとして、コーヒータイムにしました。


木陰
【松の木陰】

駅の桜並木 ぶどうの丘 桃畑
【駅の桜並木 ぶどうの丘 桃畑】

剣ヶ峰と甲州高尾山
【振り返り見る剣ヶ峰と甲州高尾山】


以前の山火事で焼けた木が残っている手前で振り返ると、さっき休んだ松ピークや剣ヶ峰、甲州高尾山がずいぶん高くなっていました。

撮った写真を見れば左に白い物が写っていますが、この時は雲かなと思ったくらいで殆ど気にも留めませんでした。

翌日のニュースで「棚横手で山火事発生」を初めて知り、写真を見てこれが棚横手の火事の煙だったのかと思いました。この写真を撮った頃は火災が発生したばかりのようで、偵察用のヘリは飛んでいたのかも知れませんが、それすら気付きませんでした。

何も知らず『山火事で焼けた木が、まだ倒れたまま残っている』と思いつつ、下の新緑カラマツや高速道路を見ながら下って行きました。


柏尾山へ
【柏尾山へ】
大善寺へ
【柏尾山から大善寺へ】

のんびり下って送電鉄塔に出ました。ここが柏尾山の山頂でしょうか。右へも細い踏み跡が下りていました。道標に従って左の大善寺方面へ下ります。

下るにつれ芽吹きから淡い新緑に変わり、所々に咲くヤマツツジなど見ながら五所神社に出ました。
周辺は桜がきれいで、展望のいい東屋もあって休憩にはいい場所です。

五所神社
【車道から見上げる五所神社】

車道に降り立ち、右へ。大善寺の桜も見たいと思いましたが、拝観料(500円)がいるらしく観光客が受付前にいました。山門をちらっと見ただけで素通り。駅へは地図と違うルートに道標が整備されていました。なるべく車道を避けるようなルートで、やや遠回りですが見晴らしのいい農道をのんびり歩いて行きます。


勝沼ぶどう郷駅に到着。駅前の桜はちょうど散り始めの頃で、風に舞い散る花吹雪がとてもきれい。今日は快晴。まだ明るい時間なので、このまま電車に乗るのはもったいない。稜線から見た時、「ぶどうの丘」の奥にきれいな桃畑が広がっていたので、見下ろしたらきれいな桃色絨毯が望めそう。ちょっと寄ってみることにしました。


勝沼ぶどう郷駅
【勝沼ぶどう郷駅】

桜吹雪
【桜吹雪がきれい】

ぶどうの丘は観光地(?)なので、道標も完備。左右へ折れながら進んで行くと、ぶどうの丘の右手にこんもりとしたお宮が見えました。あそこは誰もいないし、見晴らしも良さそうなので行き先変更。


東屋から見る桃畑
【東屋から見る桃畑】

上がってみると東屋があって、桃畑が広がっています。淡い新緑もきれいで、のどかな景色。嬉しくなって、見えているくねくね道も歩いてみたくなりました。ちょっと探すと、下へ細い小道が延びています。

落ち葉に隠れた段々がついていて、下って行くと石仏がずっと下まで並んでいました。

春の柔らかな緑の中で、優しく微笑む観音様の石仏。手を合わせ、降り立ったところには「小丸山の百番観音」の案内板がありました。

小丸山の百番観音
【小丸山の百番観音】

周辺の桃畑をちょっと散策。裏側から見ると、「ぶどうの丘」は確かに展望台としてはいい位置にあるようです。このとき左手に煙が漂っていて枯れ草が燃えているような臭いがしました。しかし、サイレンもないしヘリが飛んでいる様子もなく、『野焼きかな』くらいの認識。よもや山火事とは思いもよりませんでした。

小丸山の百番観音~ぶどうの丘
【桃畑から見るぶどうの丘】

旧勝沼ぶどう郷駅ホーム
【単線時代の旧勝沼ぶどう郷駅ホーム】


まだまだきれいな青空を見上げながら、桃畑や菜の花の黄色畑を見つつ、のんびり駅へ向かいました。

線路沿いの桜並木に階段があったので上がってみると、単線時代の旧勝沼ぶどう郷のホームでした。下り口は工事中だったので通り抜けは出来ませんが、駅名板やベンチがあって、桜を見ながら電車の時間調整するにはいい場所です。

帰りの勝沼ぶどう郷駅で電車を待つ人々も、のどかな花見モード。山火事を知っていた人は少なかったのではないかと思いました。


素晴らしい快晴に恵まれ、甲州高尾山の稜線からは桃色に染められた景色を眺めつつ、気持ちのいい尾根歩きが出来ました。富士山や南アルプスもすっきり見えて本当に嬉しい一日でしたが、翌日知った棚横手の山火事にはびっくりしました。前回の山火事から10年以上たって、ようやく育ちつつある木々もまた痛手を受けて、関係者もお気の毒だなあと思いました。植林が大きくなって展望がなくなるのは『・・・』だし、かといって火事で木々が焼けるのは痛々しいし、複雑な心境です。


土曜日に介山荘に泊まった方のメールによれば、日曜日、自衛隊のヘリが幾つも上日川ダム湖の水を汲み上げピストンしながら消火していたとのこと。火事はどんな場合も初期消火が重要。乾燥しきった晴天の昼過ぎの火災発生。大規模になる前に、なぜもっと早く自衛隊を要請して当日から消火に努めなかったのかと疑問に思いました。4日目の火曜日朝もまだ燻っているとのニュース。夜に雨が降って、ようやく山林関係者も安心されたのではないかと思いました。



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